物は試し

とりあえずから始まる日常

論語物語

論語」という書名を知っていても、実際に読んだことがある人は少ないのではないだろうか。
しかし、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」のようになんとなく聞いたことがある言葉が、実は論語の一節ということはある。
論語とは孔子の言行録で、のちに弟子が編纂したものだといわれている。
そんな論語を物語調にして、読みやすくしたものが論語物語である。


 論語の登場人物を歴史の中の人としてではなく、普通の現代人のように描き、物語として心の動きを描いている。

教育者でもあった著者下村湖人は生涯をかけて論語を学んだという。

教育者としての立場や視点が物語をリアルなものにしているのかもしれない。

登場人物の心の動きは、非常に人間らしく、身近に感じられることだろう。

一つ一つの物語が示唆に富んでいて、飽きることがなく、平易な文章で書かれているので疲れない。
物語をじっくりと楽しむことができるだろう。

 

 論語というと、学ぶものと感じる人も多いと思われる。しかし本書は、小説を読むような感覚で読むことができる。
現代の多様な価値観のなかで、孔子と弟子たちとのやり取りは、自分の在り方について考える助けになるだろう。
今まで、論語を知っていても、読んだことのない人に手軽に手に取っていただきたい。